NEWS

  1. HOME
  2. お知らせ
  3. 【前編】広島県が取り組んでいる 「チームイノベーション道場 in 広島」について

【前編】広島県が取り組んでいる 「チームイノベーション道場 in 広島」について

現在、人口減つまり生産年齢人口の減少の中、県内総生産の7割を占め、特に、成長の原動力である「人財」を主要な経営資源とするサービス産業の生産性向上をサポートするミッションに取り組んでいます。

生産性の向上について申し上げますと、「生産性」を測る指標は、さまざまありますが、一般的には、「一人あたりの労働生産性」は、「給与総額、営業利益、租税公課で構成される企業が生み出す付加価値額」(分母)を「労働者数」(分子)で割るという、数字の関係性で表されます。
もう少し簡単にいえば、分子は、サービスの革新等の「革新ビジネスの創出」「付加価値の向上」、分母は、「ムダ・ムリ・ムラ」の改善等の「効率の向上」ということです。

今回のコラムは、このサービス産業の生産性向上の取組みとして、広島県が取り組んでいる「チームイノベーション道場 in 広島(Team・Innovation・And・Empowerment・School略して「T・I・E・S」=参加者の結びつき)」について、なぜ取組みを始めたのかと取組みの特徴について、私、梅田から、次回は、この取組みに参加している参加者の模様と変化について、スコラ・コンサルトの岡村プロセスデザイナーから、前・後編でお伝えします。

●取組みの経緯・背景

サービス産業生産性向上をサポートするミッションについて、どのように取り組むかを考えていましたが、一つ、ひっかかることがありました。

私は、これまでは、新商品開発・販路開拓等の事業化・市場化のプロジェクトのサポートに多くかかわってきました。その中で、経営者・代表者と社員の間で、プロジェクトについての認識の乖離が要因で、社員が取り組まない、あるいは、取り組めないという状況となり、プロジェクトの遅延や失敗を目のあたりにしてきた経験から、「中小企業において生産性の向上を実現するには、いかにして、社員が動くのか」ということが大事だと痛感しました。

会社を動かしているのは、経営者であり、社員でもあります。
経営者自身は意欲があっても、社員が動かないことは、生産性が伸びない要因の一つとして考えられます。分母の「効率性の向上」・分子の「付加価値の向上」という生産性向上に取り組む自体においても、社員自身が取り組むことになるはずですから、やはり、社員が動くか否かにかかってくることになると思います。

つまり、このことの解決なくして、果たして、生産性向上はできるのか。
まずは、このことを解決することが、生産性向上に取り組む前段ではないのか。
この問題提起を契機に、「T・I・E・S」で、この問題の解決に取り組むことにしました。

そして、この課題を解決するには、「まずは、事業化・市場化に取り組む前に、会社のミッション・経営方針を腹に落とし込み、社員が、自律的に行動するための社内環境づくり、つまり組織風土改革が必要」という、一つの仮説を立てました。

この仮説の実現に向けて、経営者、社員、誰もが認識しているが、なかなか、着手することが容易でない、根源的な問題にチャレンジし、会社の原動力で社員のやる気を引き出し、社員のパワーで、会社を成長させるというシナリオを考えました。

しかしながら、「組織風土改革は一筋縄でいかない」と悩んでいる中、スコラ・コンサルト創設者で、現プロセスデザイナー代表の柴田昌治さんの著書「日本企業の組織風土改革~その課題と成功に導く具体的なメソッド」に出会いました。

「組織風土改革は、やる気のある社員が集まり、事業を進める、そのためのバックアップしてくれる経営者・上司の方々で構成されるコアネットワークがあれば、出来る。」という内容でした。

このことは、私見も入りますが、まさに、学生時代の学びの中で記憶していた、人間は、合理性を求める経済人の面を持つだけでなく、情緒に影響され、仲間意識を大切にする集合体の、「インフォーマルな組織」が生産性を上げるという、ホーソン実験で発見された経営学の「人間関係論」、そして、チーム内で相互の思いやり・配慮のある「心理的安全性」が働いている環境があることが、生産性向上の要因として発表した「Googleのプロジェクト・アリストテレス」が、実証してくれています。

この書籍との出会いがきっかけで、スコラ・コンサルトの岡村プロセスデザイナー、ほかの皆さまと出会うことで、具体的な仕掛けで取組みができると確信し、「T・I・E・S」の開催に至ることができました。

●取組みのねらい

この「T・I・E・S」を通して、参加者が牽引役となり、自社内で、『社員のやる気を引き出し、社員が自律的に行動できる、環境整備や組織づくりにより、社員自らが、「分子の付加価値の向上」である革新的なサービス・商品を開発する等のイノベーションを創出する、好循環の正のサイクル』を目指します。

●取組みの内容

参加者はディスカッション科目とプロジェクト科目の2つの科目において、経営実務に直結するナレッジ・スキル等の修得と、それらを、具体に活かして、イノベーションを生むための、社内の環境・組織づくりを実践します。

ディスカッション科目では、チームワーク、マインドセット、デザイン思考、レジリェンス、データ分析などの、科目・テーマに沿って、「生の具体的な経営事例の素材を基に、参加者どうしのディスカッション」を通じて、テーマについての本質や真の課題を探り、参加者各自が、自社の経営・自分の仕事に、テーマを関連づけ、意識付けしていく習慣化や、イノベーション創出に必要なスキルを修得していただきます。

プロジェクト科目では、ディスカッション科目で学んだ知見やノウハウを活用して、現場で、社員が自発的・自立的に革新的なサービス・商品を創出するための、社内で、所属や立場を超えて、ディスカッションする「オフサイトミーティング」を繰り返し行ない、相互理解を深め、経営の方向性を共通認識・共有化し、やる気のある社員を集め、コアメンバーによる、社内環境を変える組織づくりを目指します。

●取組みの特徴

仕掛けに特徴があるのではないかと思います。

中小企業の多くが有するであろうテーマを複数用意し、一つのテーマでは解決できない仕掛けとしています。
講師陣は、助言に留め、参加者自身が、常に、経営や仕事の中で、意識し、悩むことで、テーマ・課題に向けて何らかの行動・取組みに結びつける力を身に付けていきます。

取り組むべきテーマについて、一つのテーマでは、自社内の課題解決に至らないため、それぞれのテーマを、いかに、点と点を線として結び付け、面となり、さらには、立体化することが大切になり、そのこと自体にも、参加者自身に気付いてもらいます。

また、前述のとおり、組織づくりについては、社内の公式な組織部門の創設をねらっているものではなく、公式な組織では、組織の枠組み・制約に縛られ、結局、社員の自律性や自発性が育たず、やらされ感が蔓延し、逆に、社員のやる気をそぐ可能性があります。
やる気のある社員・人財の集合を、コアメンバーとする、非公式でフレキシブルな組織づくりを通じて、経営指針・ミッションという一点突破による、サービス・商品の創出を継続的に行なうことが肝要と考えており、従来の、事業化や市場化の取組み自体をサポートするのではなく、その前段階の組織づくりをサポートすることが、大きな違いです。

さらに、経営者だけでなく、社員も原則が参加することが、この取組みのポイントです。
社員も参加することで、社員の視点だけでなく、経営者の視点での、モノ・コトを見る力を養われるとともに、経営者も他社の社員とのディスカッションを通じて、現場視点を取り込むことを目指しています。

●参加者の特徴

「ものづくり」から「サービス」へと変革するビジネスモデルの創出等、「ものづくり」と「サービス」の業種区分も明確でなくなっている現状を踏まえ、飲食業、宿泊業、卸・小売業、倉庫業、IT情報サービス業等のさまざまなサービス産業の他に、製造業の事業者にも参加していただき、イノベーションを創出するのに必要な多様化を、あえて、目指す場としています。

●やってみての感触、感想

勤務日・勤務時間でありながらも、参加者の皆さま方が、積極的に、事前に宿題に取組み、T・I・E・Sの場でも、発言・発表等により、場を盛り上げていただき、当日の講義等が円滑に進んでいることに、主催者としても、大変、感謝しています。

●最後に

このT・I・E・S自体を作るのに、上司である部長や課長が、われわれ担当者が取組み易い環境、つまり相互に配慮し合う心理的安全性(ディスカッション科目のテーマでもある)が働く環境を作っていただき、また、関係者の調整等様々なサポートをいただいたおかげで、開催することができたことは、まさに、この「T・I・E・Sで取組んでいること」と同じケース事例であることを申し添えて、終わりにさせていただきます。

次回は、この取組みに参加している参加者の模様と変化について、スコラ・コンサルトの岡村プロセスデザイナーからお伝えいたします。

広島県商工労働局
イノベーション推進チーム 中小・ベンチャー企業支援グループ
梅田宏行

記:元吉 由紀子

スコラ・コンサルト コラム 2019.01.30より転載させていただきました。
http://www.scholar.co.jp/column/detail.php?id=358

お知らせ

お知らせ一覧

参加申し込み開始

TIES2023年度参加申し込み開始

 

アップサイクルプロジェクト

見えない「もったいない」も宝物に変える、地域連携ファクトリー